定積分で面積計算が出来るということは、興味深くインパクトが強いですし、それをそのまま覚えている人も多いのではないでしょうか。
しかし実際に色々な問題を解くとき、この理解だけですんなりやれるのは基本的な一部の問題に限られます。
定積分と言えば面積計算、という理解は捨てる必要はなく、それはそれでいいのですが、もっと色々な定積分の性質についても習得を深める必要があります。
ここではより様々な問題を解けるようにするため、定積分とそれを利用した面積計算についての解説と問題例を挙げたいと思います。
不定積分においては、一度微分された形をしている関数について、その微分する前の元々の関数の候補を突き止めることが出来ました。
関数F'(x)、f(x)について、F'(x)=f(x)であったとき、
∫f(x)dx=F(x)+C(Cは積分定数)ということで、微分する前の関数の形についての情報が得られています。
この段階だと積分定数に適宜値が入る余地があるため、本当に元々の微分したらf(x)になる関数を定めたことにはなりませんが、もし問題に更なる条件が書いてあってそれを解くことでCの値が求まるなら、微分する前の関数を完璧に求められたということになります。
このとき、F(x)をf(x)の原始関数と言いました。F(x)は、そのときの条件化に依りながら定めたいf(x)の式の候補だというわけです。
それに対し定積分では、この原始関数F(x)を用い、積分区間の上端と下端においてのF(x)の値の差を求めています。∫[a→b]f(x)dx=[F(x)]=F(b)⁻F(a)となって、出てくる答えは定数です。
これが、a≦x≦bにおけるy=f(x)とx軸との間の面積に等しくなったのでした。
しかし、この計算でそのような面積が求められるということは、厳密によく考えてみ出すとy=f(x)のグラフが座標平面上のどこにあるかによるということが分かります。
y=f(x)がx軸より上にあるときであれば、上のような計算をすることだけで注目している面積が出せますが、グラフがもしx軸より下にあるのであれば、やってみると分かりますが値が負になってしまって面積を出したとはなりません。
一応、負の面積というような考え方を持ち出せば全体論として積分は面積計算であると理解出来ないことはないのですが、通常面積と言ったら正の値としていますから、そのように言われるのでしょう。
以下の例で具体的なことを見てみましょう。
∫[0→1](⁻x^2-3)dx=[⁻x^3/3-3x][0→1]=-1/3-3=-10/3
⁻x^2-3の0から1までの定積分を求めたら、値は負となったので、これは面積の値を求めたとは言えない結果です。
ただこの値は、求めたいy=⁻x^2-3とx軸との間の0≦x≦1における面積の値と絶対値は一致しています。
従って、その面積値を答えとして求める問題だったら絶対値を考えて、10/3とすればよいと分かります。
そのため、積分で面積計算をしたいと思ったら、積分区間においてグラフがx軸より下になるところにおいては、値の絶対値を考えればよいと言えます。
一般的には、最後まで定積分計算をしてからその値の絶対値を取るより、被積分関数の方に最初に絶対値を付けてしまって、x軸に関してグラフを対称移動し上側に持ってきたものを想定してから、それに対し計算していくという方法が取られます。
今の例なら、∫[0→1]|(⁻x^2-3)|dx=[x^3/3+3x][0→1]=1/3+3=10/3という計算をすることで、求めたい面積計算が出来たとなるわけです。
トレーニングをするために、もう少しいくつかの類題を解いてみましょう。
1.y=⁻1/xが、1≦x≦2においてx軸と囲む面積の値を求めよ。
1≦x≦2においてはy=⁻1/xのグラフはx軸より下側にありますから、絶対値をつけて計算しないといけません。
よって答えは、
∫[1→2]|(⁻1/x)|dx=∫[1→2](1/x)dx=[logx][1→2]=log2-0=log2
です。
2.y=(x-2)^3の1≦x≦3における定積分の値、またその範囲でこの関数がx軸と囲む面積の値を求めよ。
まず定積分については、
∫[1→3](x-2)^3dx=[(x-2)^4/4][1→3]=(3-2)^4/4⁻(1-2)^4/4=1/4-1/4=0
です。
この場合、値は0になりました。
次に面積計算については、1≦x≦2においてy=(x-2)^3がx軸より下に、2≦x≦3においてはx軸より上にあることを考慮して計算して、
∫[1→2]|(x-2)^3|dx+∫[2→3](x-2)^3dx=[(x-2)^4/4][1→2]+[(x-2)^4/4][2→3]
=0-(-1/4)+(1/4-0)=1/4+1/4=1/2
です。
確かに単なる定積分計算と面積計算の仕方とで異なった値が出てくる問題でした。
3.x=-y^3+yが⁻1≦y≦1においてy軸と囲む面積の値を求めよ。
これは、通常扱っているグラフに対してxとyの立ち位置が逆になっている関数についての、積分を使った面積計算の問題です。やりづらさはありますが、それとして面積計算の手順通りに考えていけば問題ありません。
今の場合、x=-y(y^2-1)=-y(y+1)(y-1)より、x=-y^3+yのグラフは⁻1≦y≦0においてy軸よりも下にあり、0≦y≦1においてはy軸よりも上にあります。
よって求める面積は、
∫[-1→0]|-y^3+y|dy+∫[0→1](-y^3+y)dy=[y^4/4-y^2/2][⁻1→0]+[⁻y^4/4+y^2/2][0→1]
=-(1/4-1/2)+(-1/4+1/2)=1/4+1/4=1/2
と計算すればよいことになります。
まとめ
これらの問題演習で分かる通り、最初に被積分関数のグラフの概形を最初に書いてみるのが計算を楽にするコツです。
また、偶関数、奇関数という概念に当てはまる、何らかの軸や点について対称な形をしている関数の面積計算の場合は、対称形の片方だけ計算して二倍するとかいった工夫でも計算の手間を省くことが出来ます。
与えられた問題の意味合いをよく考えながら解いて、積分分野の問いを得意にしましょう。
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